メインメニュー


弁護士が執筆するコラム - 埼玉県さいたま市の弁護士事務所- 菊地総合法律事務所は、相続、不動産、同族会社の案件や、株式買取請求などの非公開会社の案件を多数解決しています。その他、交通事故や貸金などの一般民事事件、離婚、財産分与などの家事事件、少年・刑事事件、そして企業法務や自治体の法務にも経験をつんでおります。


ナビゲーション

平成20(2008)年3月のコラム一覧へ戻る

不動産の売買代金の争い−証人調べのパワーの一例として

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1.弁護士の大塚です。40期です。本日のテーマは証人調べということですので、それについて、弁護士業務において感じることなどお話いたします。

私は、証人調べが大好きです。どれくらい好きかというと、我が子の方が断トツで上位ですが、我が妻よりは上…、いや同じくらい…、いや少し下くらい好きです。

証人調べこそ、弁護士に残された最後の砦と思います。交渉や、判例法令の調査など、他の職種でも可能かもしれませんが、法廷での証人調べは、弁護士以外に適切な職種がありません。

裁判では、事実認定のためには、やはりどうしても、契約書など書証が中心となります。しかし、それを補う主要なものとして、証人調べがあります。

2.ご承知のように、証人に対しては、申請した側が行う主尋問、反対側が行う反対尋問、そして裁判官が行う補充質問があるわけですが、反対尋問が、証人調べの華となります。しかし、反対尋問が効を奏したがどうかについて、最近の調査研究では、弁護士を対象としたアンケートの回答では、それなりにあるにもかかわらず、裁判官のそれでは、相当低いことが知られています。やはり、証人調べの前に、裁判官はある程度の心証をとってしまって、それを覆すのは大変なのだな、と思うのですが、私などは、かえって、決してそれがゼロではない、ということに希望を感じます。

3.私自身の最近の経験ですが、不動産、土地の売主が依頼人となったケースがあります。相談をうけ、契約書を見ると、約1億9000万円と代金額が明記されています。しかし、依頼者に言わせると、契約時、後でその代金額を相当額に増額するという合意ができていた、というのです。もちろん、そのような合意は、契約書には書かれていません。普通でしたら、増額請求は無理ですよ、というのが弁護士の回答となります。

しかし、およそ不動産の売買については、契約書に記載されたことが全てで、それ以外の事実を考慮しないという国、法律もありますが、日本の法律では、契約書があっても、真実、代金額についてそれと異なった合意があったことが認められれば、その代金額が認められることがあります。また、判例では、不動産の売買などで確定した代金額の合意がなくても、相当額での代金の合意があったとして、裁判でそれが認められることがあります。すると、本件では、1億9000万円より増額した代金が認められることがありうるわけです。

その依頼者から、契約にいたる背景事情、当事者の関係、相場などなど、相当詳しく事情聴取を行いました。そして、訴訟をする価値があるという結論にいたり、当方で検討した額での増額請求の訴えを提起しました。

4. その後、双方の主張、反論が出揃い、いよいよ証人調べとなりました。相手側の証人に対する反対尋問において、手ごたえを感じることができました。判決は、当方の主張には達しませんが、相当の増額を認めたものとなりました。

契約書には、1億9000万円と書いてあるわけですから、裁判官としては、それを覆す判断は、なかなか、しずらいはずです。その裁判官を説得する力、パワーが、今回の証人調べにはあったのだと思います。

証人調べについて論じる書籍などは、従来、刑事訴訟についてのものが多かったですが、民事訴訟にも応用がききます。また、最近は、民事訴訟を念頭においた書籍もかなりでています。

証人調べの技術、テクニックについては、また改めてお話する機会があると思います。私も、若い人たちと一緒に、まだまだ、勉強を続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

一覧へ戻る