2015.07.09

大塚 嘉一

安保法案反対に反対の弁護士がマイケル・ピルズベリー著「100年のマラソン」を読む

1.埼玉弁護士会は、今年(平成27年)5月28日に、集団的自衛権行使を保証する違憲な閣議決定の撤回を求め、安全保障法制の制定に反対する総会決議、というものを発表しました。日本弁護士連合会も、同月29日、同様に安全保障制度の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言なるものを発表しています。

私は、埼玉弁護士会や日弁連が、このような決議、意見を発表したり、あるいはそのような趣旨で集会をしたりすることには反対です。埼玉弁護士会、日弁連の会員全員がそのように考えているわけではないことを宣言したい。私は、安保法案反対に反対する弁護士です。

2.Michael Pillsbury The Hundred-Year Marathon 2015 を読みました。著者のマイケル・ピルズベリー氏は、アメリカの中国政策に長らく関わってきた人で、中国語に堪能な方です。中国の指導部は、アメリカを追い落として世界の覇権国になる野心を隠してきた、私たちは騙されていた、と断言したものですから、今、話題の一冊になっています。

100年とは、中華人民共和国の建国が1949年、それから100年後の2049年を、中国の覇権確立の目標とする政策を意味する、とのこと。

ご自分が、直接、中国の要人と関与してきたことが詳細に語られており、とても興味深い。多くは、噂で聞いていたことですが、直接、ご本人から述べられているので、説得力があります。

私も、中国が、2008年のリーマンショックを機に、アメリカを見下し始めた、という話をよく聞いており、そんな単純なことがあるのかと、ずっと疑問に思っておりました。この点、氏によると、中国人はshiを重要視するので、中国人は、shiを感じているのだとのこと。Shiとは、英語には翻訳しづらいと断りながら、一番ぴったりなのは、映画スターウォーズの「フォース」だと。政治的な勢いとでも言うのでしょうか。漢字では、「勢」でしょうか。中国人は、リーマンショックで、自分のところにshiがやってきたと思ったのでしょうか。

知識人と大衆の関係、共産党と軍の関係など、もっと触れてほしい点もありますが、それは他の本で勉強して、ということなのでしょう。

騙される方の責任というものあります。同書には、これからアメリカがやるべきことも、書かれています。

一日も早い日本語訳が望まれます。

3.21世紀は、台頭する中国と、世界がどのように折り合いをつけるかが最大の問題であると指摘されて久しい。

13億の中国の民と、全世界はどのように付き合っていくべきか。

我々は、同時代に生まれた者同士として、次世代の子供たちに何を残せるかを真剣に考える必要があります。豊かな自然環境や良好な国際関係を、譲り渡すことができるようになりたいものです。

国家のように、中央集権が存在しない国際社会においては、難しい問題です。

しかし、それは、一つになった地球に住む70億の我々現代人の共同の責任です。

日本は、その地位に応じて、積極的に世界平和に貢献できるはずです。弁護士会の指導部が、この点において消極的なのが、とても残念です。

私は、15年ほど前、中国の病院に医療機器を寄付する篤志家の方に同行させていただいて、彼の地を訪問し、現地の方々に歓迎の催しをしていただいたことを思い起こします。皆さん、お元気でお過ごしでしょうか。

中国の株式市場の現状について、日本の新聞、テレビは黙して語りませんが、注意深く観察する必要があります。

戦争に反対は、誰もが同じ思いでいます。問題は、そうするには、どうするべきか、です。ここは、議論の必要なところです。

4.え?安保法案に反対の方ですか?

日本は、憲法9条を守っていればいいのであって、他のことは考える必要はない、ですって?

…正気ですか?