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遺産分割と非嫡出子と弁護士
1.数年前、依頼者Aさんから相続の事件を受任しました。Aさんのお父さんが急にお亡くなりになり、他の兄弟たちと遺産分割をすることになった、という案件です。私が代理人弁護士として、遺産分割協議の話し合いをすることになりました。
ところが、その話し合いの場では、Aさんの取得分は他の兄弟の2分の1という扱いです。
遺産分割調停を家裁に申し立てても、裁判所もそれを前提にします。
何故でしょうか。
2.実は、Aさんは、非嫡出子だったのです。非嫡出子とは、法律上の婚姻をしていない男女の間に生れた子です。Aさんのお父さんは、Aさんのお母さんとは結婚しておらず、後にAさんを子と認知してくれたのです。
日本の民法は、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定めています。
法律婚を尊重する趣旨だと説明されています。
同じく被相続人の子でありながら、その法定相続分が異なるというのは、法の下の平等(憲法14条)に反しないのでしょうか。
最高裁は、この問題については、合憲であるとの判断を繰り返しています。しかし、違憲であるとの反対意見が添えられることが多いのも事実です。
3.法律婚を尊重する趣旨は、他の法規でも実現できるはずです。非嫡出子の権利を制限することは、憲法14条の平等原則に違反する、と私は考えます。生れてくる子には、何の責任もありません。
この争点は、現在、全国各地の裁判所で、争われています。
最高裁が、判断を変える日も遠くない、私はそう信じています。
4.Aさんのために、私は、最高裁まで戦う決意を固め、準備をしました。
しかし、Aさんは、ご自分のお母さんのこと、他の兄弟の家のことなどを考えて、法廷で争うことを断念なさいました。お父さんに可愛がってもらった思い出を胸に、他の兄弟よりも少ない取得額での遺産分割協議に同意しました。
私は、一弁護士としての限界を感じました。
Aさんの権利を実現することができなかった悔しさは、今も私の胸で疼きます。