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平成23(2011)年11月のコラム一覧へ戻る

美術品と鑑定

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

破産管財人をしていると、破産者の財産中に絵画などの美術品が含まれていることがあります。破産者の財産を適正に評価、換価して、債権者に配当するのは、破産管財人の重要な職務です。一見して偽物と分かるものはいいのですが、購入の経緯や現品そのものからして、判断に迷う場合もあります。そのときは、関係者に問合せる、業者に見せるなどしますが、場合によっては、鑑定が必要となることもあります。

ことは破産事件に限りません。

もう二十年以上も継続的に関与している依頼者のお一人から、最近、相談を受けました。

その方は、自分のポートフォリオの整理のため、所有する浮世絵のコレクションの一部を、アメリカのサザビーズを通じて処分しました。オークションの結果の一覧表を見せていただきましたが、誰でも知っているような作品が高額で売れたことは当然として、聞いたこともないような作品が驚くような高値で落札されています。これには、私だけでなく、ご本人も、おどろいたとおっしゃっていました。世界中の好事家の下した判定です。余人には図りがたい世界があるものだと、改めて思い知りました。

問題は、今回処分を検討した作品の中に贋作と判断されたものがあったことです。それ自体は、コレクションが多数にのぼると、避けられないことです。しかし、さて、どうしたものか。

アメリカには、有名なケースがあります。かつて、さる富豪が、ヨーロッパで絵画を本物と信じて買い求めました。それを鑑定に出したところが、偽物との鑑定結果がでました。その大富豪は、売主に対してではなく、鑑定人に対して損害賠償訴訟を提起しました。そして勝訴して、賠償金を手にしました。

時代背景、鑑定の手法、司法制度など問題はありますが、考えさせられる事件です。

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