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ロレンスの黙示録論を読み直す
1.David H. Lawrence Apocalypse 1930は、何度も読み直す価値のある本です。
我が国では、現在、福田恒存の訳により、「黙示録論」の表題でちくま学芸文庫に収録されています。以前は、「現代人は愛しうるか」という題でした。
福田恒存をして、私に思想というものがあるなら、それはこの本によって形作られた、と言わしめた本です。
この伝でいくと、私にとっても、この本は、私の思想の半分を作ってくれた本です。私に、思想というものがあるなら、ですが。
2.新約聖書を通して読んだ人なら直ちにわかるように、最後の黙示録だけが異質です。ロレンスの黙示録論は、この黙示録の異質性を執拗なまでに分析し、最後の第23章で、自分の思想を展開します。
曰く、人間が完全に独立であることはありえない。国家をはじめとする集団との関係を考えずに、人間を考えることはできない。人間は、孤立したまま、救いを得ることはできない。
人間にとって、最も重要なことは、生きて連帯することである。そのために、一回だけ生殖力を持つことを許されているのである。私たちは、コスモス、太陽、大地の一部である。同様に、人類、国民、家族の一部である。まずは、それらとの有機的な結合を目指せ、と。
3.ロレンスは、我々がコスモス、太陽、大地の一部であると言うとき、比喩として表現したものと思われます。
しかし、現代物理学は、それが単なる比喩でないことを明らかにしてくれました。
137億年前のビッグ・バンとともに宇宙ができたとき、存在するのは水素、ヘリウムなどの軽い原子が主なものでした。それでは、現在、我われの身体を作り上げている鉄や炭素などの原子は、どのようにしてできたのでしょうか。
フレッド・ホイルは、1957年、恒星が、その内部の核反応により、鉄を初めとする重い原子を作ることを発見し発表しました。これは、20世紀の物理学の最大の金字塔の一つとも言われています。
マーカス・チャウンは、その著書Marcus Chown The Magic Furnance 1999(邦訳は糸川洋訳「僕らは星のかけら」ソフトバンク文庫)中で、これを次のように語っています。
「我われが生きるために、何十億、何百億、いや何千億の星が死んでいる。我われの血に含まれる鉄、骨に含まれるカルシウム、呼吸をするたびに肺を満たす酸素は、全て地球が生れる前に死に絶えた星の炉で作られた」。
そして我々は、いずれ再び、ともに天空に星となって輝くのです。
私は、これ以上のロマンを知りません。
4.ロレンスが、その芸術家の直感でもって感得したことを、現代人は、科学の裏づけを得て、確信することができます。
サイモン・シンによると、この事態を、ロマンチストは自分をスターダストと言い、皮肉屋は核廃棄物と言います(Simon Singh Big Bang 2004。邦訳は、青木薫訳「宇宙創成」新潮文庫)。
自分をスターダストと感じられないときは、一休みして、とりあえず鋭気を養う必要がありそうです。
ロレンスの言葉です。「まずは太陽とともに歩め。そのほかのことは、徐々に、徐々についてくる」。