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やっぱり貧乏父さんが好き
1.ロバート・キヨサキの「金持ち父さん 貧乏父さん」(Robert Kiyosaki Rich Dad Poor Dad 1997)。アメリカで、ついで日本でベストセラーになりました。
著者は、収益を生む資産が本当の資産であり、ローンの付いた自宅などは「負債」に過ぎないと主張し、不動産投資を勧めます。そして、不労所得を得る方法を教えてくれた人物を金持ち父さんと呼び、真面目に勉強し仕事をすることを口うるさく言い続けた実父を貧乏父さんと呼んで、前者のほうを尊敬する、と言うのです。
その後、アメリカでも日本でも不動産バブルがはじけ、2008年のリーマンショックで金融バブルがはじけたはずであるのに、今もなお、類書が次々と書店の店頭に並びます。
2.著者の主張とは裏腹に、私は、貧乏父さんに対してこそ尊敬の念を覚えます。公務員として教育改革に打ち込み、子供に対しては、専門知識を習得することの重要性を説き続けます。確かに、お金には、執着しましませんから、金持ちにはなりませんでした。
金持ち父さんはといえば、蓄財の才はあるようですが、その資産をどう自己形成に生かすのか、どのように社会に還元するのかが、具体的に見えてきません。
結局、人間と人間との絆を金銭と見るのか、それ以外の有機的つながり(理想、社会正義、信頼などなど)に求めるのかの違いだと思います。
3.自分の持って生まれた才能を、最大限発揮して共同体に役だち、なおかつ自己実現を果たせるような、そんな生き方を目標としたとき、それが、金銭を貯めることであるというのは、さみしい。
生まれる時と場所を自分で選ぶことはできないとしても、その環境の中で自分が誕生したことの意義を追求することはできるはずです。
弁護士に限らず法曹は、法治主義をあまねく社会に及ぼすことを理想として職務に励みます。斜に構えて、なかなかそういう発言をする人は少ないと思いますが。自己実現と社会正義の実現との両方を満たしうる重要な、そして面白い仕事だと私は思います。
もっとも、弁護士業務を行う際の知識としては、同書中にある会計の知識は最低限というか、常識の範疇に入ります。財務諸表の損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)が読めなければ、企業経営者とは話をできません。それに加えてキャッシュフロー計算書(CF)は特に大事です。
4.みんながみんな、不労所得で生活するようになったら、社会は回っていくのでしょうか。貧乏父さんのような人がまっとうに生活できるように考えるのが、政治の役割なのだと思います。