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平成25(2013)年1月のコラム一覧へ戻る

日本の豊かさ

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1.日本は豊かか。

日本は、先ごろ、GNP世界第二位の地位を中国に譲り渡しました。

このまま経済的にも衰退していくのでしょうか。

今なお、ヨーロッパを旅し、その街並みを散策すれば、その富の蓄積、層の厚さには驚かされます。

日本は、ついに豊かさを形にすることなく、このまま滅んでいくのでしょうか。

2.経済以外で言えば、例えば四季。春、夏、秋、冬と豊かな自然に恵まれています。豊かな自然は、豊かな収穫をもたらしたはずです。

鉱物資源も、量はなくとも、種類は多種多様なものがあります。金銀も、昔は多量にとれたはずです。ジパング(黄金の国)と呼ばれていたことが、それをうかがわせます。中国からの書物を含む文物の輸入には、その金銀が使われたことでしょう。

DNAの多様性も、日本人の特色です。日本人には、外国に例を見ないほど、多様な人種的DNAが認められるそうです。このことは、もともといた人間と、あとからやってきた人間が、迫害もせず、侵略もせず、仲良く共存したことを想像させます。人間同士で争うよりも、自然を相手に収穫に励んだ方がトクだったのでしょう。豊かな自然の恩恵です。

本物のDNAだけでなく、日本人は、多様な文化的DNAを備えています。

3.日本人は、平和を愛好する民族なのか、好戦的な民族なのか。外国人の目には、不思議にうつるそうです。

エリアスは述べます。「略奪・戦闘・人間狩り・狩猟、それらすべてが中世世界では、社会構造に応じて公然と認められた生活必需品の一部を占めていた。したがってそれらは権力者や強者にとって、人生の喜びに欠かせぬ要素であった」。ところが、中央集権国家が成立し、国法体系による保護、すなわち警察と司法が行き渡ると、安全であることが、もはやあたりまえのことと意識されます。もはや剥き出しの暴力が賞賛されることはありません。人々は、暴力を抑圧し、それに代えて、文化的洗練を競うようになります(エリアス「文明化の過程」法政大学出版局)。死刑廃止論や、平和主義は、文化的洗練を競うことの一例です。

日本は、古代の呪術の時代から、自力救済を旨とする中世、そして国家による保護の時代と、連綿と続く歴史を有しています。外敵がいるときには、これと果敢に戦いました。平和の世では、これを遠慮なく享受しました。いずれも同じ日本人です。我われには、状況に応じて対応することができる文化的DNAが備わっています。

領土的野心を持つ隣人に対しては、それに対抗する文化的DNAが我われにはあります。

4.暴力は、物理的なものばかりではありません。貨幣の暴力というものがあります。世界経済が不透明です。かつて経済的繁栄を謳歌したかに見えた日本が、なぜ、その蓄積を実感できないまま老いていくかのようであるのか。

安倍政権は、経済の建て直しを最優先課題としています。日本人の働きが、日本の豊かさとして実感できる方策が求められています。

そのためには、日本だけがトクをするのではなく、世界中の人々が豊かになる必要があります。 世界中の人間と豊かさを共有できるような制度を作り出すことが、21世紀の日本人に与えられた課題なのだと考えます。

冷戦の終結は、地球を一つの村としました。かつて、迫害もなく侵略もなく共存し、やがて日本人となった我われの知恵が求められているのです。

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