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平成26(2014)年3月のコラム一覧へ戻る

死刑に関する情報提供(その2)

執筆 : 代表弁護士 大塚嘉一

1 日本弁護士連合会の考え方(死刑廃止論)

(1)死刑の犯罪抑止力は証明されていません

死刑を廃止すると凶悪・残忍な犯罪が増加するのでしょうか?

死刑に他の刑罰(例えば終身刑など)に比べて,とくに犯罪の抑止力があるという証拠はありません。アメリカでは死刑廃止州よりも存置州の方が殺人事件の発生率が高いというデータがあります。日本では死刑になりたいという動機で「無差別殺人を起こした」とされる事件もあります。

犯罪の抑止は,犯罪原因の研究と予防対策を総合的・科学的に行うことによって進めていくべきです。

(2)死刑の残虐性

日本では,死刑の執行は絞首刑によって行われています。絞首刑の場合,落下する際に首が切断されるおそれがあると指摘されています。

自らも死刑の求刑及び死刑執行への立会いの経験を有する元最高検検事が,「受刑者に不必要な肉体的,精神的苦痛を与える」もので,憲法第36条が絶対に禁止する残虐な刑罰に限りなく近いと裁判で証言しています。

2 死刑存置論

(1)死刑と犯罪抑止力

ある犯罪者が死刑になれば、以後、同人によって同種の犯行が行われることはありません(特別予防)。死刑に、当該死刑囚以外の者に対する抑止力があるか(一般予防)については、議論があります。これまで行われたいくつかの調査では、データの取り方や、その評価が難しいためか、相反する結果が出ています。数理生物学などによる最近の研究では、犯罪に対する制裁(punishment)の存在理由は、進化論的に説明できる、との主張がなされています。犯罪の抑止のための努力は、死刑の存廃にかかわらず、進めていくべきは当然です。

(2)死刑の残虐性

最高裁は、一貫して、絞首刑は憲法第36条の禁ずる残虐な刑罰に該当しないとの判断を示しています。実際にも、現実の死刑囚の犯行が、絞首刑よりも残虐でないという事例を、判例集中から見出すことはできません。残虐性を言うなら、死刑の真の怖さは、国家というある種のフィクションによる死の確実性にあり(ドストエフスキー「白痴」)、それが死刑を他の殺人と隔絶したものたらしめているのです。

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