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埼玉弁護士会の死刑廃止総会決議に当たって
2020年3月23日
埼玉弁護士会の先生方に
埼玉弁護士会の死刑廃止総会決議に当たって
大塚嘉一
平成6年1月29日、木村壯先生から「大塚君、ちょっと事務所に来て。渡すものがある」と言われ、伺うと、死刑問題に関係する資料をどっさり目の前に置かれ、ありがたく頂戴した。私は、死刑存置論(正確には、死刑制度存置論)者。木村先生は、死刑廃止論者。同年3月29日に、埼玉弁護士会で「死刑制度研究会」と題して、会員のための学習会があり、私が存置論の立場から意見発表を行うことになっていた。いただいた資料が、私の立論に役立ったことは言うまでもない。
同学習会では、私は、「死刑制度存置論」という論考を提出し、持論を開陳した。同論考に対しては、後に死刑廃止論者の佐々木新一先生から反論の書面をいただいた。筆が滑った点を見事に突かれ、反省した。先生から、私の論考を整理して会報に掲載したらと勧められた。私は、論考を補充訂正して、日弁連の「自由と正義」に投稿したところ、採用され、平成7年1月号に掲載された。今のところ、私の唯一のCiNii論文だ。その後も、進化生物学や数理統計学の勉強を続け、パワーアップしているので、今書くとしたら、まったく違ったものになるだろう。私に対する質問、反論等がある人、また、今現在の私の考えが聞きたい人は、電話で予約のうえ、事務所にいらっしゃい。何時間でもお相手するぞ。しかも、おいしいコーヒー付きだ。
さて、今月26日に、死刑反対を決議する総会が予定されている。活発に議論するという埼玉弁護士会の伝統に恥じない総会にしたいものだ。仮にも、数だけを求める委任状争奪戦になっては、残念だし悲しい。
私は、死刑廃止の決議には反対だ。私が、死刑制度存置論者であるという理由からだけではない。死刑存置論の会員、存否論にかかわらず総会決議とすることに反対の会員を無視して、総会決議を挙げることに反対なのだ。来るべき総会では、死刑の存廃論よりも、決議をすることの可否に、議論を集中させるべきだろう。死刑存廃論は、議論が尽くされたといわれるが、それは間違いで、まだまだ議論しなければならない難しい議論がある。
私は、弁護士会は、国民各層の意見を掬い上げ、代理し、国民主権を活発化するためにあると考える。一見、矛盾すると思える要請もあろう。それをどう調整し、国民の利益を増大させるかが、弁護士会の腕の見せ所であろう。決議により自分の思想信条を棄損させられたと感じる存置論者、犯罪被害者の心情、権利を擁護するべく汗をかき頑張っている弁護士のことも考慮していただけたら、幸いである。死刑廃止を主張する先生方、私は先生方の理想主義に最大限の敬意を表する。しかし、それは有志と言う形で発表する方法もあるのではないでしょうか。今回の総会を、埼玉弁護士会の分断を回避し、より一層の統合を進め、国民に対する法的サービスの提供という弁護士会の機能をますます増進させる機会にしたいものである。