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ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」(「The Spy Who Came in from the Cold」1963)を読む
1.スパイ小説の大御所の出世作。彼は、本作品により、集団よりも個人が大事であることを訴えたかった、という。ダイナミックに展開するラブ・ロマンスも、息をつかせぬ法廷劇も、リアルなアクションも、そのためか。数々の賞に輝いている。
大型トラック2台に挟まれて今まさに押しつぶされようとするフィアットに乗っている、笑って手を振る子供たちのシーンが、印象的に二度登場する。二台のトラックは、アメリカとソ連か。今だと、何だろう?と考えてみる。
2.日本語訳の表題「寒い国から帰ってきたスパイ」は、練りに練った文学的表現とも思える。原題の「The Spy Who Came in from the Cold」は、come in from the coldが、承認される、復帰するなどの意味を持つイディオムだから、文字どおりには「復活したスパイ」ほどの意。